大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)14号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事實〕

控訴人は昭和十九年二月二十四日被控訴人から、容量二十石ないし三十石の故酒樽千五百本を、代金は石当り七円五十銭の割合、その他の約束で買受けることを契約し代金の一部を前払いした。これに対し被控訴人は合計二百七十四本の故酒樽を控訴人に引渡したがその余は期限を過ぎても履行しないというので、控訴人は被控訴人の債務不履行を理由に契約解除の意思表示をなし(一)既に支払つた代金の過払部分、(二)残余の酒樽が未引渡に終つたため蒙つた損害金、(三)引渡を受けた故酒樽の内規格の金箍がはまつていないものが約七十本あり、控訴人がこれを規格に適合するよう修覆するに要した費用、即ち被控訴人の不完全履行による損害金、を夫々請求した。原審は控訴人全部敗訴。

〔判斷〕

控訴審は、控訴人と被控訴人が昭和十九年十月末頃協議の上同月十九日までに引渡ずみの故酒樽百九十九本については、すべてその売買代金を石当り金十円に値上げし更に被控訴人の手持ちの百本に限り石当り金十五円の計算にて送付することとし、本件売買契約を打切り残余の部分は解除する旨の合意が成立したこと、被控訴人は右の約旨により昭和二十年一月までの間に故酒樽七十五本を送付したがその余は品切れとなつたのでこれを以て当事者合意の上打切りとして解約した事実を認定した。しかして前示(一)の代金過払の事実、(二)の債務不履行による損害賠償の請求を否定したが、(三)の不完全履行による損害賠償の請求を認容しこの範囲で原判決を変更した。

右(二)に関する判示は、本件売買においては、契約総数千五百本の内、二百七十四本は引渡を完了し、その余の部分については当事者双方の合意によつて契約が解除されたものであることは、前段に詳述した通りであるから、被控訴人としては、爾後残余の故酒樽を控訴人に引渡すべき義務なく、従つてこの部分について、元来債務不履行の責を負うべき筋合ではないばかりでなく、敍上の如く当事者双方の合意によつて契約が解除された場合においては、たとえ契約の一方の当事者の責に帰すべき事由によつて契約解除の己むなきに至り、これがため相手方が損害を蒙つたとしても、合意解除の際特にその損害賠償の請求を留保する等の特段な事由が存しない限り、その賠償請求権は放棄されたものと認めるのが相当であるから、かゝる特段なる事由の存していたことを肯定するに足る確証のない本件においては、仮に控訴人が契約の解除により履行を受けることができなくなり、ために損害を被つたとしても、右合意解除に当り控訴人はこれが賠償請求権を放棄したものと認むべきである。」と云い、

前示(三)に関する判示は、「元来本件故酒樽は、東京都防衞局に納入するものとして、控訴人が被控訴人より買受けたもので、その納入品の規格として右酒樽に竹箍及び金箍が交互に六本はめられていることを必要としていたことは、被控訴人も諒承の上その趣旨において右売買契約が成立したものであるところ、現実に被控訴人から送付された酒樽の内、金箍がはまつていないものが約七十本もあつたので、控訴人はこれを東京都防衞局に納入するに当つて規格に適合するよう金箍をはめなおしたため、少くとも金千九百円の出資を要したものであつて、爾来控訴人は自ら又は竹村金次郞を通じて被控訴人に対し度々これが損害の賠償を要求しつづけてきたものである事実を認めることができる。以上の事実から考えると、訴訟人の支出した右金千九百円の補修費用は、畢竟被控訴人が債務の本旨に従つた酒樽を引渡さなかつたという不完全履行によつて生じた損害に外ならないものであつて、しかも右酒樽は東京都防衞局に納入されるものとして取引せられ、その納入品について前述の如き規格が定められていたことは被控訴人も諒承していたものであるから、控訴人が右酒樽の納入に当り敍上の如き所要の補修をなすことにより被つた損害については正に被控訴人においてこれが賠償の責を負うべきものといわなければならない。

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